香澄
思えば。ようやくデートまで漕ぎ着けたのに、まさかのドタキャン。
せっかく押さえたレストランをキャンセルするのも勿体なくて、ナニゲなく香澄に言った一言――「まあ、一緒に食事にでもどうかなって…」服はヨレヨレ、髪はボサボサ。
パッとしないにもホドがある香澄は、だが、見違えるような姿で待ち合わせの場所に現れた。
あまりのことに理性を保つべくついおサケが進んでしまい、予定外の外泊に。不意に抱きついてきた彼女は頬を染め俯きながら言った。
「お兄ちゃんのこと…、ずっとずっと好きだったから」――そこから俺たちは始まった。
千夏
常に無愛想…というか不機嫌そうな彼女。
眉間にシワを寄せたその表情は、彼女なりの照れ隠しだったことが分かった時。
「ねえ…、よかったらちょっと寄っていく?」二人きりになっての帰り道。
今日も今日とて小難しいそうな表情の千夏に不安さえ感じていたところに、不意にそう言われた。
姉とは真逆にニコニコ顔の千秋の一言に、ちょっとイタズラ心の実験。千夏はそれを受け入れた。
絡み合うように肌を重ねる彼女は、今まで見たこともないとろけるような表情だった。
「ば、ばかぁ…、恥ずかしいよぉ…っ」…無性に彼女が可愛く思えた。
真琴
両親の留守中に田舎から幼馴染みのイトコが遊びにくる。
そう聞かされたのは夏休みに入ってすぐのことだった――昔とはすっかり変わった彼女…真琴は、髪も伸ばし、料理も上手になり、胸も大きくなってとても女らしく、綺麗になっていた。
見違えるほどに。
しかし、ガサツで乱暴で男勝りで、一緒に居るといつも散々な目に遭わされてしまう昔の元気な真琴の方がどこか愛おしく、心のどこかでその姿を追い求めてしまう…。
いつの間にか無防備に寝入ってしまった彼女に、本音の気持ちと若気の至りの狭間で揺れつつ葛藤していた宏一に真琴はシビレを切らし…???――どこかチグハグな二人の気持ちが、今夜、一つになる。
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