知的で服装も組織に順応してきた社会人の女性
年齢は４０代の半ばだった
コンタクトは彼女からだった
夜
彼女が仕事を終えて喫茶店に居る時に連絡をくれた
電話の向こう側では喫茶店の雑然とした話し声が聞こえていた
「結婚して約２０年が過ぎました」
少しだけ嘆息が混じった小さめの声だった
夫に対する不満は決して口にしなかった
それよりも現状、自分自身の置かれた立場を客観的に説明してくれた
「現在、家庭裁判所の調査官をしています」
「大学を卒業して以来、ずっとこの職業に就いています」
法曹界
固い、真面目な印象しかない業界
それを絵にかいたような女性
世間から見ればエリート
仕事に没頭したことが男性への興味を半減させたのか？
人生を振り返った時、そのことに後悔が差したのか？
「もっと恋愛を経験しておけばよかったと後悔しています」
「男性を知るべきだったと言うより、経験をもっと踏むべきだったと思います」
「セックスも数人の経験のまま結婚、ここまで来てしまいました」
彼女の発する言葉が非常に知的で難解であった記憶がある
普段、法律用語で仕事をしている彼女
いや女性
当然のように
そのまま私が喫茶店に出向いていった
雨の降る日だった
語り合って理解しあった
二時間超の会話の後
「マスターと一緒に旅行がしたいです」
「知りたい欲望とセックスの欲望、さらにちょっと休みたい」
激務の女性 妻 そんな肩書の人の素直な気持ちであった
百合の咲く夜
そして再び出会った
旅に出た
人里離れた温泉宿
和室に二人の男女
彼女の服装は白の花柄のワンピース
細身の身体によく似合っている
ロングのヘアーを束ねて横で縛っている
雰囲気がある
大人の女性の独特の雰囲気が
旦那に対して手を振る妻
外ではヒグラシが鳴いている
雰囲気のある和室だった
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