時は今から40年前の戦後20年、この時日本は高度経済成長期にあった。当時、鉄銅業は「鉄は国家なり」と言われるほどの機関産業だった。そんな時代に世界に誇る鉄を作ることに命を掛けた息子と金融再編の荒波の中で生き残りを掛けた*、そしてその*と子を取り巻く珍俵一族の愛と憎しみと性欲に満ちた過激で変態な一族の物語である。ある晩の食事のとき、「今日は私がこちらへ」と執事の悪子が小介の左側の席へ座った。席には小介、妻のやえこ、執事の悪子、次男のきんぺい、長女のいち子、その旦那美馬、次女のに子、てつへいの妻さやえが座っていたが晩餐のときに、左の席にすわった者が小介と一夜を共にするという暗黙の了解があった。15年前にこの一族にもぐりこんだ悪子はたびたびこの席に座り小介と激しい夜を過ごしていた。愛と金と性欲と憎悪を蠢く中で少しずつこの一族が崩壊に向かっているとは誰も知らずに小介の部屋からは悪子の喘ぎ声と小介の荒い吐息が木霊するのだった。
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